もうタイトルで言いたいこと全て言っているのだが、7ヶ月かけて NURO を開通させた。 これはなにも NURO の工事に7ヶ月待たされたという話ではなく、「初めての一人暮らし」であったり「賃貸物件の共用部への工事」といった要素が絡み合って時間がかかってしまった。
特に後者の「賃貸物件の共用部への工事」を解決するための戦いに多くの時間を費やし、先日ついに開通したためその記録を残したい。
引っ越しと1度目の宅内工事
昨年9月に実家を出る形で引っ越しをした。実家でも NURO を通していたこと、またリモートワーク環境を整えるための引っ越しであることから、引き続き NURO を利用しようと考えていたため、物件探しの段階で「NURO の工事が可能なこと」を条件に物件を探していた。
その後工事可能なマンションを契約し、引っ越し予定日に宅内工事を予約した。
そして宅内工事当日。
集合住宅の場合、宅内工事は宅内から MDF 盤まで光ファイバを通すことを目的とする。
つまり、部屋 (-> IDF) -> MDF
といった経路で光ファイバを通すことになる。
MDF(Main Distribution Frame): 集合住宅やオフィスビルの共用部に設置される電話回線や光ファイバなどの集線装置。 IDF(Intermediate Distribution Frame): MDF から各戸分配するにあたって中間に設置される中継機器。複数フロアの物件の場合は通常各階に設置される。
しかし、この工事では 部屋 -> IDF
の経路でファイバを通す途中でファイバが詰まってしまい、IDF まで通せないという事態に陥った。既設の電話回線等により配線を通すパイプが詰まっていたのである。
工事作業者と一緒になって、ファイバの通る音を頼りに詰まってしまっている地点を特定したが、そこは共用部(マンション廊下の天井裏)であり、またその地点に点検口などといったものが無かった。
そのため、この宅内工事では「別途点検口を設けるなどして、通線可能な状態にならない限り開通不可能」という結論となった。
ここでの学び
- 入居前の「工事可能」はできるだけ厳密に確認しておく
- 光アウトレットが既設の物件であればなおよい(こういった物件はほぼ築浅なので家賃は高い)
- IDF とか MDF とか、このへんではじめて知った
点検口を開けてもらうための5ヶ月
さて通常、集合住宅かつ賃貸物件の場合は共用部へ点検口を設けるなどといった工事は許容されないことが多い。特に今回問題になっているのは 部屋 -> IDF
の経路であるため、ここに点検口を設けるとなると他のフロアにも等しく設ける必要があるかもしれない。オーナーがこのコストを支払うのを避けたい気持ちは十分に理解できる。
しかしそもそも私は「工事が可能」という条件で物件を契約しているため、これを武器に戦うこととした(たとえ、この条件が不動産屋が深く考えずに発言した内容であっても)。
物件は私とオーナーとの間に管理会社が入っているので、まずは管理会社と交渉することになる。 ここからが長い戦いの始まりであった。
最初の1ヶ月
最初の1ヶ月は、まず管理会社に「なぜ NURO を通したいか」を理解していただくための期間であった。 集合住宅の場合、一口に光回線といっても各戸分配する方式によって品質が大きく変わる。(参考: https://internet-flets-campaign.net/column/separatefiber/ )
このマンションには NTT の VDSL 設備はすでに備わっているため、対外的には「光回線が利用できます」と謳っていたし、管理会社の方もまた「光回線が利用できる」という認識であった。 そのおかげで、まず「なぜ NURO を通したいか」の説明が必要となった。
もちろん、光配線方式がとれればどの事業者でもよいので、個人的には NURO でもフレッツでも何でもよかった。 しかしフレッツはサービスとして VDSL と光配線の両方を提供している。 以下に示すやりとりを経て、「フレッツを利用したい」というスタンスでいると余計な混乱を招きそうと判断し、「NURO を通したい人」で通すことにした。
NTT の VDSL 設備が備わっている場合、VDSL 方式のフレッツ光は当然今のままでも利用可能である。 そのためか、管理会社から「フレッツなら光回線を通せます」という旨の回答を受けた。
この回答を逆手に取り、「フレッツ光なら通せるんですか?光配線方式でも?」 と質問したところ、おそらくあまり考えておらずに 「はい!通せます!」 と返ってきた。
もちろん通せるわけはないので、 「本当に通せるんですか?光配線方式って何か分かってますか?」 と改めて確認したところ、 「はい!わかります!」 と返ってきた。
分かっているとのことなので、改めて 「VDSL 方式と光配線方式の違いを説明できますか?」 と確認した。
すると 「ADSL ですか?」 と返ってきたため、改めてこれらの違いを説明し、理解いただいた。 ほかにも、「NURO が使える物件は付加価値が高まりますよ」的なことも(無責任に)言った気がする。
ここで辛抱強く説明を重ねて理解いただいたことで、以降管理会社の方がこちらの味方についてくれることとなる。このステップがなかったら以降の点検口開口の交渉も難しかったのではないかと思う。
これが最初の1ヶ月。
ここでの学び
- 辛抱強く説明すると分かってくれることがある
- 分かってくれると味方になってくれることがある
- VDSL 方式と光配線方式の違いについて結構調べた
その後の3ヶ月
「なぜ NURO を通したいか」を理解いただいてからは、管理会社と物件オーナーとの交渉となる。 交渉の目的は点検口の工事可否確認になるのだが、先述の通り物件オーナーからすると共用部への工事は敬遠される。
さて、この期間は管理会社とオーナーの間での交渉が行われていたため、基本的に私がすることはなかった。 この間に私がしていたことは主に以下の2つである。
進捗確認
1つ目が進捗の確認。これは管理会社側が交渉の進捗をこちらに報告してくれないためであった。そもそもこちらから問い合わせないと報告しないというスタンスならそれでよかったが、彼らはいつも「いついつまでに改めてご連絡します」と言っていたのにも関わらずそれを守らなかったのであった。思い返してみると、これが守られたことは1度もなかったように思う。
そのため、平均的には2週間に1度、多いときは週に1度のペースで確認を取っていた。
直接引き込みの可否確認
そして2つ目が「点検口を開けずに工事を行う方法の確認」である。 そもそも私は「ただ単に点検口を開けたいだけの人」ではなく「NURO を通したい人」であるので、点検口を開けずに工事が可能ならそれでも良かったのだ。
点検口を開ける必要があるのは 部屋 -> IDF -> MDF
といった経路での通線を行う場合であって、直接部屋に引き込むことができればその限りではない。実際 NURO は集合住宅であっても場合によっては部屋に直接引き込むことが可能である。(参考: https://www.nuro.jp/article/mansionjyouken/)
つまり、for マンションプランでなく通常プランであれば電柱から直接光回線を自室に引き込むことができる。通常プランは、以前は7階建て以下の集合住宅という条件があったものの、この条件は2019年に撤廃されたそうだ。
自室に直接引き込むことができれば、IDF や MDF のことを考えずに済むため、こちらの可能性についても検討した。
さて、自室に直接引き込むにあたり障壁となるのが「壁への穴開け」である。外壁から屋内にファイバを通すための穴開け、並びに穴へのカバー取り付けのためビス留めが必要となるのである。これらは外壁への穴開けとなり、賃貸物件の場合はほぼ容認されない工事となる。
しかし、これについても回避することが可能である。詳細はこの記事を確認してほしい。
要約すると、エアコン等の配管を利用してファイバを通し、ビス留めは両面テープで代替するなどの方法による回避である。
外壁への穴開けを回避できることが分かったため、管理会社に「外壁への穴開けがなければ工事してもよいか」、NURO に「私の住んでいる物件は直接引き込みが可能か」の確認をそれぞれ行った。
前者は穴開けがなければ良いとのことだったが、後者が不可能であった。つまり、私の住んでいる物件は直接引き込みができないのであった。
従って、NURO を開通させるにはやはり点検口を設けてもらうしかないということとなった。
そして
さて、これらのことを進めている間に管理会社とオーナー間の交渉は進んでいた。 管理会社の尽力のおかげか、オーナーの理解も得られ、点検口開口の工事が可能となったのである。
これが2021年1月中旬の出来事である。開始からすでに4ヶ月が経過していた。
ここでの学び
- NURO は集合住宅であっても場合によっては直接引き込むことが可能
- NURO は直接引き込みの際、場合によっては外壁に穴開けをしない施工が可能
最後の1ヶ月
ここは実際に点検口を開ける工事を待つだけのほぼ消化試合であった。 そして2月中旬、ついに点検口が誕生した。
つなぎの VDSL
引っ越し当初は、まず引っ越し予定日に宅内工事完了、その後1〜2ヶ月で屋外工事完了といったスケジュール感でいたため、モバイル Wi-Fi(WiMAX) をレンタルして仕事をしていた。
しかし、戦いが長丁場になりそうだったこと、モバイル Wi-Fi では仕事にならないことから、つなぎになる VDSL を契約することとした。
つなぎに利用する回線は、契約期間の縛りがないことが優先される。 NURO が開通できた場合即座に解約することとなるため、違約金等が発生するのは避けたい。また、契約期間の縛りがなければ、NURO の開通が不可能であった場合も改めて適切な事業者を選択することができる。
契約期間の縛りがないプロバイダは検索するといくつか出てくるが、enひかりを選択した。IPv6 オプションを追加することで IPoE での接続が行えるためだが、他でもできたかもしれない。
この VDSL は 12 月に開通した。都合 4 ヶ月で解約することとなったが、モバイル Wi-Fi から解放してくれて感謝している。
ここでの学び
- NURO の工事待ちが長期化することが見込まれる場合、契約期間の縛りのないプロバイダを契約するとよい
- モバイル Wi-Fi をレンタルし続けるくらいなら、さっさとつなぎの回線を契約した方がよい(工事費がかかるが、モバイル Wi-Fi による諸々のストレスをなくせるほうが大きい)
点検口が誕生し、2度目の宅内工事
点検口が誕生し、3月上旬、2度目の宅内工事が行われた。2度目の宅内工事では、1度目の工事と同じ作業者の方が来てくれた。作業者の方は1度目の工事のことを覚えてくださっていて、半年越しで工事を完了でき、お互いに戦友みたいな感じになった。
ただ、開けてもらった点検口の場所が微妙に良くなかったらしく、結局 IDF への通線は少し苦戦したらしい。
ともあれ、宅内工事が完了した。これが3月初頭。ここまでで5ヶ月半が経過していた。
そして終戦
宅内工事が完了し、残すは屋外工事のみとなった。NURO の屋外工事は長く待たされることで有名だが、私の場合は約1ヶ月半後の 4/22 に行われることとなった。 そして先日 4/22、ついに屋外工事が完了したわけである。
というわけで、VDSL と NURO の速度比較画像をもって本記事の結びとしたい。 なお、開通したプランとしては NURO 光 G2 V(旧: マンションミニ)プランである。
余談
屋外工事にあたって、管理会社に連絡をしたところ、半年に渡って協力してくれた管理会社の担当の方が異動かなにかで担当を外れてしまっていた。最後にお礼を申し上げたいところだったが、叶わず。
ここでの学び
- 光配線方式しか勝たん。
- 半年経つと人は異動する可能性がある
おわりに
というわけで、7ヶ月かけて NURO の通っていない賃貸物件に NURO を開通させることに成功した。管理会社の方を味方につけたことや、(結果としてこの方法は取れなかったが)直接引き込みの検討など、様々なアプローチで NURO 開通へ向けて邁進したことがこの結果に繋がったのではないかと思う。
また会社の slack でこれらの進捗を逐一実況しており、多くの方が見守ってくれたことも支えとなった。開通したときは多くのリアクションをいただけて、ありがたい限り。